「おい、待てよ」
「待ちません」

ホグワーツの廊下を、早足で歩く音がする。
ハーマイオニーが「勉強の邪魔だわ」と、小さく呟いた。

図書室へと続く廊下を、シルバーブロンドが走る。
前を歩く黒髪の少女は、後ろを振り向く事も無い。
それでも足を動かす速度は、確実に速くなっていた。

二人の緑とシルバーのマフラーが、翻る。

「いつまで追いかけて来るつもり、マルフォイ」
「君が止まるまで、だ。

はその言葉を聞いて、ピタっと止まった。
勢いよく振り向くと、追いかけてきたマルフォイを睨みつけた。

「何の用かしら?あたし、忙しいのよ」

マルフォイは一瞬たじろいだが、すぐにいつもの薄ら笑いを浮かべた。

「今日は僕と一緒に、勉強をする筈じゃなかったか?」
「そんな約束――忘れてしまったわ」

目をそらして呟くの腕をひっぱると、マルフォイはこう云った。

「忘れた?なら思い出してもらおう。
 君は昨日、僕にチェスで負けた。
 負けた罰として……今日は僕と勉強する筈だ」

は憎憎しげな顔をして、マルフォイを睨んだ。

「チェスは苦手なの!あんなのフェアじゃないわ!」
「どこがフェアじゃなかったんだ!?」
「アナタのボディーガードがあんなに睨んでたんじゃ、
 考えられるものも、考えられなくなるわよ!」

マルフォイの顔から薄ら笑いが消えた。
はさっきよりも、ずっと強くマルフォイを睨んだ。

「負けは負けだ!」
「フェアじゃないわ!」
「君はチェスが不得意なだけだ!」
「アナタ、じゃあロンに勝てる?!ハリーには?
 グリフィンドールを目の敵にしているようだけど、本当は勝てないだけよ!」

近くを歩いていたハリーとロン、そしてハーマイオニーを見つめながら、
は半ば叫んでいた。

「同学年で一番チェスが得意なのは、ロンよ!」
「……なんだと?」
「わたしに勝ったぐらいでいい気にならないで!王子様!」

腕を握る力が、だんだん強くなっていった。
痛みに顔を顰めながら、は叫んでいた。

「じゃあ、僕がウィーズリーに一度でも勝てたら……」
「その勝負はフェアじゃなくちゃ、ダメよ?!」
「もちろん。勝負の時は君が立ち会えば良い」
「いいわ!」

ロンは傍で露骨に顔を顰めた。
マルフォイが顔をピンクにして、睨んでいたからだ。

「絶対勝ってやる!そしたら、、僕と付き合えよ!」
「いいわ!……ん?」

走り去るマルフォイを困惑顔で追いかける、

二人の緑とシルバーのマフラーが、翻る。



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蘭子/030318



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