(寝てるのか…?)

肩に重みを感じて、ふと隣を見れば、の寝顔が見える。

(……普通寝ないだろ、こんなところじゃ)

近くで見ると、自分より細くて小さいことが解る。壊れそうなぐらいだ。
それから、自分の心臓が早鐘状態なのも、解った。

(まったく、無神経な女だ)

その無神経な女を好きになった自分を、ほんの少し情けなく思った。

だって、きれいだったんだ。
初めて見た時から、凄くきれいだったんだ。

彼女と一緒なら追いかけっこだって楽しい、マルフォイはそう思った。

ずず、と彼女が動く。
その度にマルフォイは体をかたくする。彼女が肩から落ちないように、と願う。

(早く起きてくれ)

誰もいなくて良かった。心底、彼は思った。
こんなところ誰かに見られたら恥だ。特にポッター達には。

でも少しだけ、誰かに見て欲しい気持もある。

(なんだ、変なの)

早鐘はゆっくり、少しづつ元に戻りつつある。
この状態になれてきたのかも知れない。

彼女の髪に、ちょっとだけ触れてみる。まだ、起きない。
早く目覚めてくれとも、もう少し寝ていてくれ、とも思う。

だから、彼女の髪にそっとキスをした。





「だから! あなたが起こしてくれれば良かったのよ!!」
「君があんなところで寝たのがいけないんじゃないか!」

ホグワーツの廊下に、少年少女の怒声が響く。

「何よ! 自分だって寝ていたじゃない。先に起きたのはあたしよ!」
「そりゃあそうだろう、君が先に寝たんだ!!」

怒声の後には、走る足音が聞こえた。

「またですか、ミスターマルフォイ、ミス!!
 …………スリザリン、五点減点ですよ!」

マクゴナガルのそんな声が響いて、足音は少し小さくなった。

追いかけっこはいつまでも続く。



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蘭子/030412



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