( テ レ ビ の 内 容 ) 「頑張るねえ」 にやけた顔で彼女が呟いた。 一階の窓から顔を出せば、サッカー部のグランドはすぐ、である。 「努力家やから」 シゲが同じように、にやけた顔で呟く。 すると彼女はそれよりもっとにやけて、遠くを指差した。 「ポチ君のことよ」 「せやから、そういう意味やろ? 」 ふふ、とが笑う。 「うそ、うそ」 「なにが」 スポーツタオルで汗をふきながら、シゲが尋ねた。 笑い声と一緒に彼女が言葉を吐き出すのを待つ。 「努力家なのは、シゲ君だ」 笑い顔のまま、がそうはっきり云うのが聞こえた。 「それは、ないやろ」 にやけたまま、シゲが否定する。 は首をかしげると、目を細めて頷いた。 「そうかもね」 そしてまた、にやける。 アリスのチャシャ猫みたいだな、と自分で云った。 「なんかのテレビで、」 「ん?」 「好きな人の愛情のバロメーターは何か、って話してたの。見た?」 彼女の呟きに、シゲが首をふる。 「それでね、ある芸能人が、好きな人が自分を見てにやけてたら、 幸せだって、愛されてるなあって思うって云ってた」 はにやけながら、シゲを見つめて云った。 それに同じようににやけながら、シゲがを見つめた。 「確かに、それもあるなあって思ったの。いい話でしょ」 「そやな。でも、」 でも? がシゲの次の言葉を待ちながら、尋ねる。 「愛してるとか、好きだとか、挨拶みたいに云うのもええんとちゃう?」 「やっぱりシゲ君、あのテレビ見たでしょ。同じようなこと云ってる人いたよ」 「じゃあさあ」 「なんや」 雲がゆっくり動いてる。 明日もきっといい天気で、練習日和だと思う。 「にやけたまま、愛してるって云うのは、きっと最高だろうな」 「そやな」 二人はにやけ顔で、お互いを見ていた。 蘭子/030318 ( B A C K ) |
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