( ス ケ ッ チ )



「何しているの?」

静かな森の中で、金色の髪のエルフが尋ねた。
見知った顔。


「スケッチ」


はゆっくりと呟いて、スケッチブックを見せる。
そこには森が、鮮明に美しく描かれていた。

「上手だ」

の横へ素早く移動しながら、レゴラスが微笑んだ。
スケッチブックをぼんやりと見つめたまま、が悔しそうに云う。


「でも、あなたに気がつかないで欲しかった」

「どうして?」

スケッチブックの中央を指差しながら、が笑う。
ほんの少しだけふくれているように見えた。

「ここに、あなたを描くつもりだったのに」
「そうか。それは悪いことをしたね」


レゴラスが笑いながら、ゆっくりと呟いた。
中央は誰かを待っているかのように、ぽっかりと空いている。


「ほら、寂しくなっちゃった」

「絵が?」

はスケッチブックをゆっくり閉じると、首を横にふった。

「ううん、わたしが」

レゴラスがの顔を見つめる暇も無いほどに、彼女は素早く立ち上がる。
慌てて一緒に立ち上がると、彼女の肩を抱いた。

「それは……私も一緒だよ」


溜息と一緒に言葉を吐き出す。
が顔をあげて、レゴラスの金髪に触れた。

「ふふ、解ってる。ご免なさい」

彼女は悪戯に笑うと、レゴラスの手の中から逃げるように離れた。
そして地面に落ちたスケッチブックを拾うと、また何か描き始めた。

レゴラスは彼女の隣に腰掛けると、

この時間が永遠に続けばいいのに。と思った。





蘭子/030321

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