( 悪 戯 ) 「大丈夫?」 「うん」 暗い図書室に、二人の小さな声が響く。 反響した声に驚く少女の手を、リーマスがぎゅっと握った。 「よく来る気になったね、」 「思い出作りよ」 グリフィンドールの少女だ。 日本人で、黒髪で、欧米等の生徒に比べて、小柄だ。 リリーと仲が良い。 一緒にいるのを見たことがある。 「でも、ドキドキしてるわ……。 いつもこんなことしているの?よく心臓がもつわね」 握られた手に安心したのか、彼女は口数を増やした。 リーマスはそれに少し微笑むと、ランプの光りを消した。 「暗いわ!」 「大丈夫、ここに座って」 悪戯だった。 それぞれに担当を決めて、夜のうちに仕掛けを作る。 誰にも内緒。 いつものみんなで談話室にいる時、二つの影が女子寮から出てきた。 リリーとだった。 「お願い、あたしも連れて行って」 自他ともに認める心配性が、悪戯をしたいだって? ジェームズやシリウスが面白がって、参加を許可した。 「これから、何するの?」 「いいかい?今から廊下でシリウスが仕掛ける。 それが終わったら、僕と一緒に行動開始だよ。いいね?」 は満足そうに微笑んだ。 今までこんな体験をしたことがない。やってみたい――と純粋に思った。 リリーに尋ねると、直接お願いしてみたら?と微笑まれた。 お願いは許可された。 「思い出つくり…って、どうして?」 「あたし、こういうこと、したことないの。真面目だから」 「確かに」 にっこり笑うからは、綺麗に並んだ歯が見える。 彼女がこんな風に笑うのは珍しい。悪戯っこの笑みだ。 「だから、一度だけでも……ってずーっと思ってたわ」 「感想は?」 「楽しすぎて、倒れそうよ」 リーマスも笑った。 ぎゅっと握った手は、いつのまにか強くなっていた。 「いいことを、教えてあげようか」 「なあに?」 微笑んだままのリーマスが低く囁いた。 「どうして、は僕と一緒だと思う?」 「この任務が、一番簡単だから?」 「違うよ」 「……あたし、図書室が好きだから?」 「それも、違う」 「……わからないわ」 「じゃあ、教えてあげるよ」 真剣に考えるの顔を覗き込んで、リーマスが呟いた。 「僕が、君を好きだからさ」 「へえ、そうなの」 「そう」 「……………え!?えぇ!?」 「!しっ!」 唇に手が触れた。 フィルチに見つかっただろうか。 「本当?」 「まあね、でも、内緒だよ」 「誰に?」 フフ、と微笑んだままのリーマスはの耳に囁いた。 「みんなに、さ」 蘭子/030318 ( B A C K ) |
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