「お願いがあるの」 顔面蒼白の女が云った。
勉 強 家
知らない顔では無い。 寧ろ忌々しいメンバーの中にいる女だ。 セブルスはそう思いながら、次の言葉を待った。 は顔面蒼白のまま、セブルスを見ていた。 そして口を開くと、 「お願い、魔法薬学を教えて」 「……ナニ?」 予想外だった。 ポッターと仲が良いわけだから、自分を嵌めようとしているのだろう。 そう警鐘が頭の中でなり響いた。 「今度のテスト……本当にヤバイの。 スネイプ君、得意でしょう?魔法薬学……教えて下さい」 は自分のローブをぎゅっと握ったまま、俯いて呟いた。 セブルスは露骨に顔を顰めた。 「僕が君に教える義理は無い」 「……うん、知ってるわ」 「君がテストで悪い点数を取ろうと、僕は困らない」 「……う、うん」 蒼白だった顔に、少しだけ赤さが戻った。 それでも彼女の顔は、『顔色が悪い』と表されるセブルスより、よっぽど悪かった。 「苦手なの。……難しい、から」 「勉強は一人でも出来る」 これ以上話す事は無い、呟いて背を向けると、ぐん、と後ろへ引かれた。 がローブを引っぱっているのである。 「お願い、教えて」 目に涙を溜めていた。 日本人だと、聞いたことがある。 黒い髪に黒い目で、肌は少し黄色いが美しかった。 ポッターと、仲間だ。 エヴァンスと親友だった筈だ。楽しそうに歩いているのを、見たことがある。 嫌いなはずだ。義理も義務も無い。 ここで彼女を無視して、寮へ戻れば良い。 彼女の細腕が自分をいつまでもここに止めておくことは出来ない筈だ。 「……どうして僕なんだ。ポッター達がいる」 「ダメなの。今更……聞けないわ。 それに、スネイプ君が魔法薬学を得意なことは……有名だもの」 涙目がこちらを見ていた。 周囲に人がいなくて良かった、と思った。変な誤解をされては困る。 「わかった」 「え?」 低く呟いた言葉に、一瞬疑いながら、は顔をあげた。 「わかった、と云ったんだ」 「……いいの?本当?有難う!」 その笑顔が自分に向けられたものだと、セブルスはしばらく気がつかなかった。 「宜しくね。わたし、って云うの。・」 「か」 「よ。宜しく、スネイプ君、いいえ、スネイプ先生ね」 は明日の授業後、図書室で教えてもらう約束をすると、 ローブを翻して、グリフィンドールの寮へ戻った。 一人残されたセブルスは、 さっきまでに掴まれていたローブを憎憎しげに見つめると、 「……先生、か」 と、一人ごちた。 蘭子/030318 ( B A C K ) |
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